【長野県】北斎に出会う「信州小布施北斎館」

【長野県】北斎に出会う「信州小布施北斎館」

上町祭屋台 北斎

小布施町に現存する祭屋台。北斎館に展示されている東町祭屋台と上町祭屋台は、北斎の描く世界観が色濃く反映された傑作。右の屋台は上町祭屋台で東町祭屋台よりひと回り大きい。

上町祭屋台 天井 女浪

上町祭屋台の天井に描かれた「女浪」。「男浪」と共に高井鴻山の依頼を受け、半年の歳月をかけて描かれた。大海の荒々しさを砕け散る波のみで表現した大胆な図柄が印象的。縁絵には翼をつけた天使が描かれ、西洋のことも知る北斎の学識の豊かさに驚かされる。

上町祭屋台

上町祭屋台 天井 男浪

上町祭屋台の天井絵「男浪」。縁絵には、唐風の花鳥や鳳凰、麒麟、唐獅子が描かれている。「女浪」と共に北斎の下絵をもとに鴻山が彩色したといわれている。

浮世絵師と言えば真っ先に思い出される葛飾北斎。江戸時代後期に活躍し、常に技術革新を試み90歳で亡くなるまで画風を変え続けた。その卓越した描写力や速筆ぶりは超人的で、生涯に30回以上画号を変えながら、3万点を超える作品を発表したという。その中で最も有名な〝神奈川沖浪裏〟は、日本を代表するような作品でありながら西洋風の遠近法を取り入れたもので、海外では〝グレート・ウェーブ〟とも呼ばれ、ゴッホやモネといった印象派の画家だけでなく、フランスの作曲家・ドビュッシーなどにも大きな影響を与えた。そんな北斎の作品をゆったりと鑑賞できる美術館として注目を集めているのが2015年4月にリニューアルされた〝信州小布施・北斎館〟だ。

北斎が初めて小布施を訪れたのが83歳の時。72歳で〝冨嶽三十六景〟を世に送り出し、さらなる高みを目指して錦絵(多色刷り木版画)から距離を置き、肉筆画の分野にシフトしようと、何度となく小布施を訪れたという。江戸から5~6日かけての長旅は、年老いた身体には決して楽ではなかったはずだが、北斎の旺盛な制作意欲の前では、小さなものだったのかも知れない。

館内に入るとまず一番奥の映像ホールに向かう。北斎を鑑賞する上でも、小布施を楽しむ上でも、まず見ておきたい映像が流れている。次の部屋は、北斎の有名な版画などが展示されている第一展示室。さまざまな企画に応じた展示がされており、〝冨嶽三十六景〟などに出会えることも。次は緻密かつ躍動感に満ちた筆づかいを感じる小布施ならではの肉筆画が展示されている第二展示室と第三展示室。そしてクライマックスである第四展示室では、北斎の肉筆天井絵が描かれた二基の祭屋台が収蔵展示されている。

北斎が晩年を過ごした土地で、北斎の息づかいを感じる感動的な美術館だ。

東町 屋台

東町祭屋台は文化2年(1805)に再建されたもので、小布施に現存する七基の祭屋台のうち最も古い歴史をもつ。天井の一部を改造して、龍と鳳凰の二図が収められている。手の混んだ欄間や妻飾りも丹念に鑑賞したい。

東町祭屋台

東町祭屋台 龍

龍はあたかも海上を飛び回るかのように、波しぶきが取り巻き、時計回りに体を動かしているように見える。

東町祭屋台 鳳凰 龍

天保15年(1844)、北斎が85歳の時に小布施に滞在し、約半年を費やして描いた東町祭屋台の「鳳凰」「龍」の天井絵。暗い藍をバックにした鳳凰と燃えるような紅のバックの龍は対極をなし、中国の陰陽思想に基づいたその明暗が屋台の装飾効果を高めている。

筆跡に北斎の緻密にて 繊細な息づかいを見る

〝冨嶽三十六景〟で浮世絵師として名声を得ながら、北斎が小布施で新たに取り組んだのは肉筆画であった。一般的な浮世絵は〝錦絵〟とよばれ、版木で摺られ同じ絵が何枚も存在するのに対し、紙や絹に直接、自らの筆で描いた作品を肉筆といい、同じ物は一つとして存在しない非常に貴重な作品。北斎館は錦絵だけでなく、肉筆画や北斎の手がけた天井絵を備えた祭屋台まで一挙に見ることができる。

北斎が晩年を過ごした小布施。当時は交易都市として繁栄を誇り、北斎をはじめ当代の文人を惹き付ける魅力ある町であった。北斎館の近くにあり、北斎が天井絵を描いた岩松院は、小林一茶ゆかりの禅寺で、〝痩せかえる負けるな一茶これにあり〟という句を詠んだ蛙合戦の池がある。その小布施に何度も訪れて滞在し、制作活動に集中できたのは、地元の豪商・高井鴻山の援助によるものが大きい。鴻山は北斎の画才に感動し自らも入門、自宅に碧漪軒(へきいけん)というアトリエを北斎の為に建て厚遇した。そして北斎も鴻山を旦那様と呼び、一年余りも継続して滞在したこともあったという。

北斎が描く変幻自在なタッチの肉筆画は、従来の色鮮やかで大胆な構図の錦絵より、さらに繊細で緻密。じっと眺めていると引き込まれそうな不思議さを感じる。美人画の妖艶さはもとより、力強い構図と羽毛ひとつひとつにまで描かれた大鷲。髪の毛一本一本まで描かれた鍾馗(しょうき)から感じられる執念ともいえる面妖さは、見る者を怖じ気づかせるほどの迫力に満ちている。

90年にも及ぶその人生の中で北斎は、美人画や花鳥画、風景画など多くの作品を残した。その貪欲なまでの制作意欲は北斎の最後の言葉に表されている。「天があと5年の間、命保つことを私に許されたなら、必ずやまさに本物といえる画工になり得たであろう」と。

北斎に出会う「信州小布施北斎館」

北斎 鍾馗 しょうき 鬼

外風になびく髪の毛一本一本まで細かく描かれている「鍾馗(しょうき)」。鬼気迫る姿が迫力満点の作品で北斎最晩年90歳の作品。

北斎 巌上の大鷲

天を仰ぎ見る「巌上の大鷲」。岩を掴む力強い足と写実的で質感さえ正確に描かれた翼に魅入る。

北斎_花魁_八朔太夫

妖艶な姿の花魁が描かれた「八朔太夫」。太目の輪郭線に北斎の筆づかいが見て取れる。

北斎 かれい めばる さより

季節の食材を題材にした作品で、みずみずしく新鮮な魚を描いた「かれい めばる さより」。

北斎 桔梗

桔梗のひと叢(むら)をのびやかに描いている「桔梗」。入念な描き込みと速筆など練達した筆づかいと濃淡の配色により、心地よく落ち着いた作品としている。

北斎 吉原 遊女 二美人図

吉原の遊女は浮世絵の中で数多く描かれた題材である。「二美人図」は北斎の美人画の中でも優品の一つである。

信州小布施北斎館

信州小布施北斎館

  • 長野県上高井郡小布施町小布施485
  • 電話番号026-247-5206
  • 開館時間9:00~17:00
    (元旦は10:00~15:00、7〜8月は9:00〜18:00)
  • 休館日12月31日(臨時休館あり)
  • 入館料大人800円(特別展の時は1000円)

Renewal Museum

2015年信州小布施北斎館、改装オープン

1976年に開館した信州小布施北斎館。40周年を目前に新館増築を実施し、2015年にオープン。葛飾北斎の残した画業をより多くの方にご覧頂けるように、ワンフロアに展示。また展示だけでなく映像でも北斎の魅力を解説。誰もが分かりやすく興味を持てるように改装されている。

第三展示室 信州布施北斎館 北斎 肉筆画

北斎の肉筆画が見られる第三展示室。さまざまな作品を間近で、またゆっくりと見ることができる。

Museum Shop

当館所蔵の作品をモチーフとしたオリジナルグッズや図録・書籍などを多数取り揃えている。人気なのは北斎漫画がプリントされた当館オリジナルTシャツや北斎館肉筆画大図鑑、ポスター、一筆箋やマウスパッドなど。北斎館でないと手に入れられないグッズを是非おみやげに購入したい。

ミュージアムショップ

正面入口入って右にあるミュージアムショップ。ネットでの通販も行なっている。

Event Information

特別展北斎漫画の世界

〝北斎漫画〟とは、葛飾北斎が絵を学ぶ人たちのために絵手本として製作した教科書的なスケッチ画集のことで、海外では〝ホクサイ・スケッチ〟とも呼ばれている。

動物や植物、人々の暮らしなど、あらゆる物がテーマとしておよそ4000図が描かれ、名作「冨嶽三十六景」と並んで北斎の代表作とされている。

今回の特別展では、この〝北斎漫画〟を余す所なく紹介。この機会にぜひ鑑賞したい。

【会期】
平成29年9月2日(土)~11月27日(月)

【開館時間】午前9時~午後5時 ※ご入館は午後4時30分まで
【入 館 料】大人1,000円/高校生700円/中学生以下無料

北斎マンガ 北斎漫画 伝神開手 雀踊り

『伝神開手 北斎漫画』三編より「雀踊り」(一般財団法人北斎館蔵)

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